自作小説続きです。
ようやくダブルクロスっぽい単語が出てきます。
ダブルクロスを知らない人にも判るように書いてるつもりです。

ダブルクロスWiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/ダブルクロス

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私立輝名学院高校。
S市の北に存在する私立高校で進学校として有名である。
卒業生徒のほとんどが東京の有名大学に進学することもあり、近年入学者数が増え始めている。
山の中腹に建てられた校舎は、自然と隣り合わせの環境を持ち、自然との触れ合いを積極的に授業に取り込んでいる為、生徒のみならず親御さんからの評判も良い。

「ここが理科室と準備室。基本的に科学系の授業はこの部屋で行われます。」
「なるほどー。」
嵐と阿美は連れ立って校内を散策していた。
コの字型をした校舎は左右の棟に1年と2年の教室が並び、真ん中の棟に3年の教室や職員室、音楽室、食堂などの施設がある。
2年生の教室から出た二人は真ん中の棟にある施設を順番に見て周っていた。
「この階段を降りると食堂があります。…阿美さんはお昼は学食派ですか?それともお弁当を?」
「え!?あ、いや、ボクは料理はあんまり得意じゃないから…。食堂があるならそこで食べると思う。」
「なるほど。じゃぁわたしと同じですね。」
にこにこと笑いながら歩を進める嵐。
この学校の食堂は校舎から飛び出る形でテラスが存在しており、目の前の自然を楽しみながら食事が取れることで有名なのである。
その為、お昼が近くなるとテラスの席取り争いが起きており、最近ではテラスの増築が計画されているらしい。
「ですから、食堂よりも購買部でパンなどを買って教室や庭で食べる人が多いようですよ。」
「なるほどなるほど…。」
「そしてここがその中でも一番の人気ポイントです。」
そう言って階段を登りきった目の前にある大きな扉を開く。
と、目の前には雄大な自然の景色が広がっていた。
「うわわっ!す、すごい眺め…。屋上って勝手に入ってもいいの?」
「えぇ。昔は屋上は立ち入り禁止だったらしいのですが、眺めがいいのでお昼休みには生徒へ解放しているそうです。」
「へぇー…。」

今は授業間の休み時間中である為、生徒の姿は無い。
授業をさぼっている生徒がいないか定期的に先生の見回りが来ることもあるが…。
「…誰も来ない分、秘密の会話もしやすいというわけでして。」
その一言で嵐の表情がほんの少し変化する。
それまでとほとんど変わらない笑顔に見えるが、さきほどよりもわずかに真剣味を増したように思える。
「日捺・阿美、またの名を『フレイムヘイズ(炎王)』。UGNに入ってわずか数ヶ月で10数件のミッションをこなし、FHのエージェントを打ち破ってきた期待の新人。お噂は伺っていますよ。」
UGN。
『ユニバーサル・ガーディアン・ネットワーク』の略で、レネゲイドウィルスに感染した者(オーヴァード)と人類との共存を目的として設立された組織である。
オーヴァードは様々な驚異的能力を持つ為、一般的に普通の人間では太刀打ち出来ない為、必然的にオーヴァードの力で対抗するしかなくなってしまう。
その為、UGNではオーヴァードのエージェントが多数在籍しており、オーヴァードが関連する事件の調査や対応を積極的に行っている。
嵐も阿美もUGNに所属するエージェントでありオーヴァードである。
今回、とある事件の調査の為に、この輝名学園高校に潜入してきたのだ。
「え?え?期待ってそんな…。」
「支部長殿から電話がありましたよ。自分が行けない代わりに期待の新人を行かせるから、って。」
「はわっ。結希さんてば勝手にそんなことを…。」
UGNはピラミッド型の組織構造をしており、下に行けば行くほど狭い地域を担当することになる。
S市にもUGNの支部が存在しており、そこの支部長が薬王寺・結希。(やくおうじ・ゆうき)
別名『フェイトインジケーター(運命の紡ぎ手)』とも呼ばれ、若干14歳にしてUGN支部長になったエリートだ。
阿美の直接の上司である。
「それにしても、今回支部長殿が来られるはずだったのに急に別な者を送るだなんて…。何か問題でもあったんですか?」
本来、事前の計画では嵐が先に潜入して情報収集を行い、後から結希がフォローの為に潜入するという手はずだった。
それが数日前いきなり連絡があり、結希が行けなくなったので別な担当を送ると言い出してきたのだ。
デートの待ち合わせでもあるまいし、いきなり作戦に行けなくなったなどというのは滅多に無い話だ。
「えっと、じつは…。少し前に本部へ送っていた部隊編成の嘆願書のことで、霧谷さんから呼び出しがあって…。」
「…書類に不備でもあったんですか?」
「いや、あの、不備とかそういうんじゃないんだけど…。」
言いよどむ阿美。
「実は…その…。本部から、『これ以上彼女にエリート隊員を預けてもよいのか』ということが問題視されたとかで…霧谷さんと今後の方針を相談するんだとか…。」
「あぁ、そういうことですか。いやはや、さすが『全滅支部長』殿ですねぇ。」
「うぅ…その言い方結希さんには言っちゃ駄目だよ…?あの人本気で泣いちゃうから…。」
薬王寺・結希はエリート支部長である。
しかし、S市の支部長になった直後、偶然にも3回続けて本部から配属された”エリート部隊”を作戦で全滅させてしまったのだ。
これはあくまでも様々な事情が重なった結果であり、結希本人の責任というわけでは無い為、本部からも彼女への直接的な罰則は与えられていないが、未だに彼女のことを影で『全滅支部長』と呼ぶ者は多いらしい。
今回、結希から本部へ送った部隊再編成の嘆願書について本部上層部が大変難色を示し、その調整の為、日本支部支部長である霧谷・雄吾から召集がかかったというわけである。

「さて、あまり時間もありませんし、そろそろ教室の方に戻りましょうか。」
屋上の入り口の方へと向き直りながら嵐が言う。
既に休み時間も終わりに近づきつつある。
1時間目の授業は先ほど風都が言っていたように自習となっているが、それでも遅れて教室に戻るのは無駄に目立つことになる。
潜入操作においては何事においても目立たないに越したことは無い。
「捜査状況や今後の対策については今日の夜にでも校外で相談することにしましょうか。」
「うん。了解っ。今日はボクの方も軽く校内を見て周るだけにしておくよ。」
二人は足早に校舎へと戻ると教室のある棟への道を戻り始めた。
「…そういえば」
ふと思い出したように嵐が声をあげる。
「先ほどの挨拶の時に井川君を見てずいぶんと驚いてらしたようでしたが何か…っと、ご本人のお出ましですね。」
「!?」
言われて目を向ければ、階段を降りた先にちょうど二人を探していた拓真の姿があった。
階段を降りてきた二人に拓真の方も気が付いて声をかける。
「二人ともどこ行ってたんだ?けっこう探したぜ…。」
「やぁ、井川君。何か用かい?」
「あー…。えっと、二人とも、『探偵』って興味あるか?」
「「探偵?」」
嵐と阿美の声がハモる。
…が、二人の反応は若干ニュアンスが異なっている。
嵐は尋ねられたことが理解出来ない疑問で一杯だが、阿美は『探偵』という言葉の響きに反応してワクワクしているようだ。
「いや、実はな…」

かくかくしかじかーっと拓真がこれまでの経緯を説明する。

「探偵部、ねぇ。…それはまたずいぶんと」
「おもしろそうだねっ!」
嵐の言葉を遮って阿美がずいっと前に出てくる。
どうやら相当今の話が気に入ったようだ。
「ひ、日捺さん?」
「探偵!いいなぁ…。シャーロック・ホームズとかポワロとかミス・マープルとか金田一耕助とか…」
目を輝かせながら有名な探偵の名前を並べていく阿美。
「…なぁ、これ止めた方がいいか?」
「いや、わたしに聞かれても…」
とりあえずこのままにしておくといつまで経っても終わらなさそうなのは間違いないようだ。
「えーっと、とりあえず部員にはなってくれるってことでOKなのか?」
「え?あ、うん!もちろん!」
「そっか。それならよかった…。で、騎馬の方はどうよ?」
「は?わたしですか…?」
探偵部というものがどれほど機能するかは未知数だが、確かに情報収集という点では有利である可能性がある。
それでも、エージェントが二人ともそれに参加したのでは情報に偏りが発生する可能性もあるし、別な情報源を探しにくくもなる。
(…ここは日捺さんにお任せして、わたしはわたしで動くことにしますか…)
「申し訳ありませんが、わたしは予備校がありますので…。部活の類はご遠慮しますよ。」
「そっか。それじゃ仕方ないよな…。」
もちろん嵐は予備校になど通っていないが、部活をやらない理由としては最も学生らしいといえる。
とりあえずその場しのぎの言い訳だ。
「まぁいいか。なんとか一人確保出来ただけでも助かったよ。これで部員の最低人数は押さえられたし。これからよろしくな。」
「こちらこそよろしくっ。」

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お、終わらせ方迷った。(つд`)
いろいろ情報を詰め込みすぎたかも…。
とりあえずこの辺で1章がお終いの予定です。
2章の前に幕間でマスターシーンが入ります。
生徒会の面々が出てきて軽く戦闘シーンを書くつもりですが…はてさて。

いちおー登場予定の面子は以下の通り。
生徒会長:神宮寺・誠(じんぐうじ・まこと)
副会長1:真彩・李佳(まあや・りか)
副会長2:由唯・一美(ゆい・かずみ)

何故かこの学校は副会長が2人いるという設定でw

コメント

nophoto
Ireland
2011年5月25日13:46

Your answer was just what I nedeed. It’s made my day!

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